スチール・ギター初心者が選ぶ楽器はどれ?

スチール・ギター初心者が選ぶ楽器はどれ?

スチール・ギターを始めるにあたって、いくつも種類のある楽器からどれを選んだらいいでしょう。スチール・ギター初めの1歩の楽器選びに付いて見てみましょう。スチール・ギターに限らず、初めの楽器を選ぶのはとても重要です。最初の1台によって、その後の楽器に対する取り組み方が変わってくるものですので、慎重に選びたいところですが、何も分からないと選びようがないと思いますので、まず、楽器に関する基本的な事をお勉強しておきましょう。今回は楽器選びに付いてを中心にお話をしていきます。

目次
スチールギターの種類
弦の数
ネックの数
チューニング
ラップ・スチール・ギター
楽器を選ぶ基準

スチール・ギターの種類
楽器選びの前に、スチール・ギターの種類を大まかに覚えておきましょう。楽器の種類をある程度把握しておき、自分に合った楽器はどれか、どのようなサウンドを目指しているのか、どのような曲が弾きたいのかに合わせて選んで下さい。スチール・ギターを大きく3種類に分けます。

ラップ・スチール・ギター
ペダル・スチール・ギター
アコースティック・スチール・ギター

それぞれを具体的に見てみましょう。まず「ラップ・スチール・ギター」はペダルの付いていない物を総称して呼ぶ名前です。ラップ・スチールの中でも、コンソール・タイプや膝置きの物もあり、また、アコースティック・スチール・ギターもペダルが付いていないのでラップ・スチール・ギターに分類してしまいます。ペダル・スチールに比べ、演奏の難易度は低く、軽く手軽に持ち運べ、小さく、安価なモデルが多く作られています。

ペダル・スチールは、コンソール・タイプのラップ・スチールにペダルとニー・レバーが付いているものです。ペダルを操作する事で、特定の弦の音程を変化せることができ、両手両足を常に動かしながら演奏しています。演奏難易度は高く、簡単に持ち運べるような重量ではなく、大きく、高価です。ペダル・スチールは、ラップ・スチールはもとより、他の楽器の追随を許さない圧倒的な存在感があり、その音が楽曲に入ったとたんに雰囲気を支配できる程の強い音色が特徴です。

 

ラップ・スチール・ギターの中でもアコースティック仕様のものは、特殊な楽器として分類しておきます。楽器本体を響かせる独特な生楽器の音が特徴です。楽器の大きさは、通常のギターと同じ位ありますが、楽器の中は空洞なので、重量はありません。演奏の仕方はラップ・スチール・ギターと基本的には同じです。ラップ・スチール・ギターに比べ生産されている個数が少ないので、値段も少し高めになります。

これら3種類の楽器のうち、アコースティック・スチールは初めの1台としては除外してしまいましょう。数も少なく、高価で、独特なサウンド感になるので、余程その音を求めない限りは難しい楽器になります。

ラップ・スチールとペダル・スチールに関して。ペダル・スチールの音は絶対的な存在感があります。しかし、楽器は高価で、重く、演奏難易度は相当高いです。左手と右手の使い方は基本的にはラップ・スチールと同じなので、ラップ・スチールから練習するのも一つの方法ですが、ペダルのその音に魅了されるとラップ・スチールでは物足りなさを感じるかも知れません。ペダルが弾きたい方は覚悟を持ってペダルを弾きましょう。ペダルを踏む感覚は、ペダル・スチールでしか練習することはできません。始めは難しくまともに曲を弾く事は出来なくても仕方ありません。それでも気合を入れることが出来れば、ペダル・スチールから弾き始めるのが良いでしょう。

単に、スチール・ギターの音や雰囲気を求めるのであれば、または、あまりよく分からないけどスチール・ギターを弾いてみたいと言う方はラップ・スチール・ギターから始めるのが良いです。ある程度弾けるようになったらペダルへ移行したりすることもできます。演奏の基本的なテクニックは、ラップ・スチールで練習する事はできます。

ペダルに取りつかれた方はペダル・スチール。それ以外のスチール・ギターを弾きたい方はアコースティックではないラップ・スチール・ギターを選びましょう。

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弦の数
スチール・ギターは多弦の機種が多くあります。弦の数はどのように選ぶと良いかを見てみます。ラップ・スチール・ギターの弦の数は6弦が最小であり、基本のセットアップです。まずは6弦からスタートするのが良いと思いますが、弦の数が増えたといって演奏の難易度が極端に上がる訳ではありません。スチール・ギターの難しい所はピッキングそのもにあるので、弦の数が1本でも2本でも難しい部分は変わらないので、少ないから優しい訳ではないのです。

弦の数が増えると、豊かなハーモニーを奏でる事ができたり、より自由な発想でメロディーを弾く事が出来るようになります。しかし、6弦でも相当な所まで演奏をすることができます。6弦より弦の多い機種を「多弦」と呼びます。7弦、8弦までが主で、9弦、10弦の機種もまれに見ます。実用性の面から8弦が多弦のスチール・ギターとして使いやすいです。

ペダル・スチール・ギターは10弦が基本のセットアップです。8弦の機種もありますが、10弦の方が入手しやすく、楽譜も出回っているので取り組みやすいです。先にも述べたように、弦の数が少ないからと言って、難易度が下がる事はありませんので、10弦から練習をすれば良いです。11弦、12弦等の多弦もありますが、これはユニバーサル・チューニングを使った機種なので、極端に難しくなります。ユニバーサル・チューニングに関しては後ほど。

ラップ・スチールは6弦がスタートの基準。多弦になっても難易度は然程変わらないので、8弦でも可。ペダル・スチールは10弦一択です。

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ネックの数
スチール・ギターはオープン・チューニングの楽器であり、チューニングによってまったく違ったニュアンスの演奏をすることが出来ます。一度に複数のチューニングを弾く場合は、複数の楽器を用意しなければなりませんが、それを1台にまとめたのが多ネックの機種です。シングルネック、ダブルネック、トリプルネック、クアダブルネックまであります。ネックの数が増えれば、それにともなって楽器の重量は増え持ち運びが困難になります。また、各ネックに配置したチューニングを覚えなければなりません。初心者が始めに取り組む楽器として、多ネックの機種を選ぶ必要はもちろんありません。シングル・ネックをしっかり弾きこなす事ができるようになったら、徐々にチューニングを覚えていけばいいです。

ペダル・スチールに関しては少し事情が異なります。ペダル・スチールは2つのチューニングがあり、これは、楽器を制作する段階で決められており、演奏者が任意に変えることはできません。チューニングはE9とC6であり、写真のようなダブルネックはこの2つのチューニングが配置されています。

シングルネックの機種は、E9かC6のどちらかのチューニングであり、これを変えることは出来ません。従って、シングルネックを購入する時は、予めどちらのチューニングを弾きたいのかを把握していなければなりません。音のニュアンスやフレーズの違い、響きの違い、それぞれのネックに個性がありますので、選ぶのは難しいですね。演奏の難易度だけで言ったら、E9の方が若干簡単です。豊かなハーモニーはC6の方が得意としています。また、シングルネックの方が流通している楽器の数が少ないように感じます。いずれにしろペダル・スチールは高価な楽器なので、初めに覚悟を決めて始めれば良いと言ったように、勢いよくダブルネックを購入するのも路だと思います。

ラップ・スチールはシングル・ネック一択。ペダル・スチールは覚悟を決めてダブル・ネックか、E9のシングル・ネックです。

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チューニング
スチール・ギターはオープン・チューニングの楽器です。チューニングは演奏者が自由に選ぶことができ、長い歴史の中で様々なチューニングが模索され、数々の名演が行われてきました。ラップ・スチール・ギターで使われる基本のチューニングは「C6チューニング」としておきます。C6は伴奏とメロディーの両方の演奏にバランス良く対応できるチューニングであるのと同時に、ペダル・スチールの一方のチューニングにもなっています。他のチューニングへの応用もしやすく、C6でアレンジされた譜面も多くあるので、取り組みやすいと思います。6弦でも8弦でも使う事ができるのも良い所です。始めに覚えるチューニングはC6がお薦めです。

ペダル・スチールは楽器によってチューニングが決まっています。基本のスタイルはE9の方なので、シングルネックならE9のネックから始めたいです。ダブルネックを購入しても、E9から練習すると良いでしょう。C6ネックはラップ・スチールのC6チューニングを応用して弾く事ができます。

ペダル・スチールのE9とC6のダブルネックは、非常に大きく重いですので、気軽に持ち運べるものではありません。しかし、ライブでは2つのチューニングを使い分けたい事が多々あります。そこで、この2つのチューニングを1台のスチール・ギターに組み込んでしまうという開発が行われました。それが「ユニバーサル・チューニング」です。各チューニングの特徴を取り入れ、持ち運びも考慮してシングル・ネックに納めているので、多弦になっています。E9とC6を弾きこなす事ができ、且つ頻繁に持ち運ばなければならない状況に陥らない限り、必要とする事は無いかと思います。

ラップ・スチール・ギターは「C6」から始めるのがお薦め。ペダル・スチールは「E9」一択です。

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ラップ・スチール・ギター
ラップ・スチールに関してもう少し補足しておきます。ペダルの付いていない物を全てラップ・スチールとしていますが、ラップ・スチールの中でも細かく種類が分かれると思うので、楽器選びの基準を解説しておきます。最も大きな基準は、脚が付いてるか否かです。脚の付いてるものを「コンソール・タイプ」と呼びます。脚を取り付けるためには、ボディー裏にマウントを付けなければならないので、必然的にボディーの厚みが生まれますので、楽器の響きも足の無いタイプよりは豊かになる傾向があります。また、脚を付けて自立させることで、演奏面においても有利に働きます。手のフォームが整いやすく、楽器が安定して弾きやすくなります。膝置きの場合は、どうしても手首が下がってしまうので、演奏に慣れていないと悪いフォームになってしまいがちです。従って、コンソール・タイプの方が初心者には向いています。脚の数は3本と4本のタイプがあります。4本タイプの方が安定感はありますが、どちらでも問題ありません。脚の付いていない楽器は、スチール・ギター専用のスタンドや適度な台に置いて弾く事をお薦めします。

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楽器を選ぶ基準
スチール・ギターの基本的な分類は分かってもらえましたでしょうか。楽器を選ぶ基準として、まず値段ですね。他の楽器と同様にピンキリになりますが、値段は楽器性能に比例していますので、高いに越したことはないです。あまり安い楽器は演奏そのものが難しいのも他の楽器と同じです。

ラップ・スチールで始めに選ぶのにお薦め条件は、「国産メーカー」「コンソール・タイプ」「6弦で5万円以上」辺りの楽器を目指して見て下さい。中古市場になると、モノの割に安くなっている楽器もありますが、状態を見極めるのは難しいですね。パーツが綺麗か、塗装がしっかりしているか、脚の欠品がないか等を良く見て選んで下さい。

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ペダル・スチールの見極めは更に難しいと思います。楽器の状態は実際にペダルを踏んでみないと分からない事が多いです。ペダルの重さや踏み心地は機種によって異なりますし、レバーの配置等も結構違います。ぺダル・スチールは、好みのレバー配置をオーダー・メイドで作るのが基本です。ある程度以上経験が無いとオーダーを出すのは難しいですので、また別の記事でペダル・スチールの事について解説したいと思います。

楽器の購入に関してご相談がございましたら、当HPのお問い合わせよりメールを下さい。出来る限りのアドバイスを致しますのでお気軽にご連絡下さい。自分に合った良い楽器が見つかるといいですね。

金髪せんせー

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Fender DLX-8

Fender DLX-8

ラップスチールギターの名器であるFender DLX-8を見てみたいと思います。

Fenderのスチールギターの中でも、バランスが良く使いやすくスタイリッシュな1台です。どんな音楽ジャンルでも使うことができる安定した音質で、スケールや弦間も程よく弾きやすく、非の打ちどころがありません。

2PU、1Vo、1Tone仕様のスタンダードなセットアップです。シンプルで扱いやすく、ライブでもレコーディングでもあらゆる状況で活躍できます。

PUはブリッジカバーの裏にあるバランサーで調整可能です。バランサー回路は以下のようになっています。ネックポジションが常時入っており、ブリッジポジションの混ぜ具合を調整しているのが分かります。

ジャックはテレキャスと同じタイプですね。L字のケーブルは使うことができませんので注意して下さい。

実は基本的な仕様はStringmasterとほぼ同じなので、詳しくはこちらの記事も参考にして見て下さい。→Stringmaserレビュー

バランスの整ったFenderの音を聴いてみましょう。

金髪先生

 

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Aチューニング

Aチューニング

 Aチューニングはスチールギターの創成期から使われていた歴史あるチューニングです。スチールギターを米国にもたらした「Joseph Kekuku(ジョセフ・ケクク)」が使用していた初期のチューニングに始まり、「Jerry Byrd(ジェリー・バード)」がC6チューニングを広めるまでに主に使われていたようです。代表的なプレイヤーを以下にあげておきます。

Joseph Kekuku

Sol Hoopii

Roy Smeck

Leon McAuliffe

Bob Dunn

 初期のAチューニングはギターのレギュラー・チューニングから2弦、3弦、4弦の3本を1音上げることでオープン・チューニングを作ることができます。弦のゲージを変えることなくチューニングできるので、通常のアコースティック・ギターを使っても弾くことができるのがポイントでしょう。SolHoopiiのように低音弦を変えるチューニングは、弦のゲージも変えなければ、かなり弦を巻くことになり、ネックにも負担がかかるので、専用弦が必要になります。

 先日紹介したナットのエクステンションを使って、アコースティックギターでスチールギターを弾いてみました。このようなトライアド・チューニングの特徴は、多くのコードやハーモニーに対応することができないということになります。従って旋律を単線で弾くフレーズが中心になり、コードを意識したポジションよりも、旋律の動きを意識したポジショニングが多くなります。

→アコギでスチールギターを弾く

 コードを使ったハーモニーの使用が限定されると、複音を使ったフレーズが多くなります。複音のポジションはおおよそ以下のポジションが使われ、これらの組み合わせが、チューニングの特徴を生んでいます。


1弦と2弦を使った3度ハモのポジション。レギュラー・ポジションで弾くことのできる使いやすいハーモニーです。

1弦と3弦を使った6度ハモのポジション。スラント・ポジションになりますが、スチールギターらしい6度のハーモニーを鳴らすポジションです。

2弦と4弦を使った6度ハモのポジションです。1、2弦を使ったハーモニーをひっくり返した音程になります。

 ハーモニーを使ったフレーズはどうしてもスラントを多用することになりますので、演奏の難易度は少し高く感じるかもしれませんが、それほど多くのパターンがあるわけではないので、バーの動き方に慣れてしまえばC6チューニングよりも楽に弾くことができるはずです。

 Sol Hoopiiの演奏による「Flower Lei」のプレイを以下のように弾いてみました。ここでのチューニングは5弦と6弦をC♯とAにしていますが、5弦のラインを弾かなければレギュラー・チューニングと同じAとEで対応することもできます。どことなくレトロな雰囲気のあるチューニングです。是非弾いてみて下さい。

金髪先生

スチールギターのバー徹底検証

バー徹底検証

スチールギターのバーは、色々な形や大きさのモノがあります。
バーの重さによって音質や音量に変化がうまれますが、その違いを検証してみましょう。

今回は5種類のバーを用意してみました。大きさの異なる一般的な円錐形のバーを3つ、軽量な三角のバーと、レールタイプのバーです。

大きさと重さを計量し、コードと単音を弾いて、それぞれの波形を見てみます。波形を比較することで、音量やサスティンの違いが視覚的に明確に分かると思います。

バーは手に持たず、弦に置いた状態で、弦がビビらないギリギリの強さでピッキングします。バー自身の重量で弦を押さえているので、バーを持つ力が加わっていない状態でどれだけ音を鳴らせるのかが分かります。

バーは12フレットに置きコードをストラムした波形と、2弦を単音で弾いた波形を取ってみます。
ギターはグヤトーンのHG-306、カノウプスOEMです。


直接インターフェイスに挿したライン入力の音を波形にしますので、癖のない音質のインターフェイス「RME FireFace400」を使用します。

三角のバー
先端に向けて細くなっているので、手にフィットしやすく持ちやすく感じるのが特徴です。サイズは小さく、重さも113gと軽いです。

弦振動でバーが遊んでしまい、かなりソフトタッチでないと綺麗に音を鳴らす事が出来ませんでした。波形を見てもかなり小さいのが分かります。上がコード、下が単音の波形です。


レールタイプのバー
指に合わせて加工してあるので、持ちやすいバーです。重さは167gと、このタイプにしては大きい方です。

音の立ち上がりはとても良いですが、伸び具合はもう少し欲しい感じがします。アタック感の良さは単音でもわかります。やはりラップ・スチールより、ハイパワーなペダル・スチールの方が合っていると思います。

DUNLOP
ダンロップ製の少し小さ目のバーです。短く軽いので、手の中に収まってしまうサイズのバーです。重さは138gと、三角のバーより少し重いくらいです。

これもかなり優しく弾かないと綺麗に音がなりません。特に低音部は弦振動にバーが負けてしまうので、強い音を鳴らすのは結構難しいです。高音弦の立ち上がりは良いですが、少し音の線が細く感じます。


一般的なバー
普通のバーです。8cmを超えるバーは10弦まで対応できます。重さは200gを超えているので、しっかりと重量を感じます。

波形の大きさが今までとはまったく違います。音の伸びも音圧もしっかり確保されています。ピッキングの力を意識しなくても自然と綺麗な音が鳴りました。


Emmonsのバー
今回最も大きいサイズのバーです。重量感はありますが、手に余る感じは無く持ちやすいです。ペダルスチールに対応する十分なサイズがあります。

音のバランスがよく伸びのよい音がします。ピッキングのストレスもなく、どの弦も均一に鳴らすことができます。音圧とサスティンの良さが波形からも見て解ります。

各バーの波形はこのようになりました。

こうしてみると、バーの重さが、音量や伸び具合に及ぼす影響が良く分かります。バー自身の重量で弦をしっかり押さえることができれば、バーを持つ手にかかる力は少なくて済みますが、重さに慣れが必要です。バーの持ち心地や重さは、演奏に影響する大事な要素なので、色々なバーを試して、自分に合ったバーを使うようにして下さい。

金髪センセー

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ワイゼンボーン

ワイゼンボーン

アコースティック・ラップ・スチール・ギター ワイゼンボーンについて見てみましょう。

ワイゼンボーン
ワイゼンボーンは、1920年代にアメリカで作られたブランドです。上の写真のようなスチール・ギターですが、当時の個体が現存しているものは数少ないです。同様のアコースティック・ラップ・スチール・ギターは、他のビルダーによって作られていますので、市場にもいくつか出回っています。ワイゼンボーン製のギター以外は、「ワイゼンボーン・タイプ」等と呼ばれて区別されています。このギターもイギリス製のコピー・モデルですが、ワイゼンボーンらしい広がりのある独特な響きを、しっかり鳴らす事ができます。

材質
ボディー材はコア材やマホガニー材が使われています。材質によって音の響き方は異なりますが、どちらが良いということではなく、アコースティック・ギターやウクレレと同様に、好みによる所だと思います。このギターはオール・マホガニーで作られています。

スライド・プレイ専用の楽器なので、ナットが高く、弦を押さえることはできません。フレットも打ってありませんが、指板部分の強度を保つためにダミーでフレットを打っている機種もあります。このギターはブラス製のナットとサドルになっていますが、アコースティック・ギターで使われる牛コツやTUSQ等のナットも多く見られます。やはり音質に影響をするので、好みが分かれるところだと思います。

構造
最も特徴的なのは、ボディからネックにかけて空洞になっている構造です。ネックのジョイントは9フレット辺りで、かなり広い面積をボディが占めているので、楽器全体が共鳴し、かなり大きな音がします。

押弦をしないので、ネックはスクエア加工になっています。座ってラップ・スチールとしてこのように構えて安定するように作られています。立奏はしないので、エンドピンは付いていません。ペグは通常のギターと同じものです。


サウンドホールにピックアップが付いていますが、これはアコースティック・ギター用のモノを後から取り付けました。

チューニング
弦は、アコースティック・ギター用の弦をチューニングに合わせて張っています。チューニングはオープン・チューニングであれば何でも弾く事はできますが、広がりのある独特な音色を活かすためには、ダウン・チューニングと相性が良いと思います。オープンDやオープンG等で、低音の迫力のある音をフレーズに取り入れると良いでしょう。

演奏の仕方
ラップ・スチール・ギターと同様にバーを使って弾いています。右手にはサム・ピックと2つのフィンガー・ピックを付けて弾きますが、指で直接弾く人もいます。サウンド感が違うので、好みで選ぶと良いでしょう。弦のテンションは緩いので、バーは少し軽めのモノが使いやすいです。

アコースティックギターらしく、開放弦+アルペジオを使ったプレイが楽器の音に合っています。開放を絡めて弾くため、チップ・ポジションでのプレイが多くなるのも特徴になります。弦のテンションが緩いので、押さえ込みには注意しなければなりません。

フレーズ
オープン・チューニングで開放弦を多く使うので、使われるKeyが限定されてきます。オープンDで弾く場合は、Key=DやKey=Gでの演奏がしやすくなります。扱うことの出来るコードもあまり多くは無いでしょう。下の譜面はKey=GのツーファイブをオープンDで弾いています。

アコースティック・ラップ・スチール・ギターは、それ程多く流通しているものではありませんが、アコギともリゾネーター・ギターとも違った独特な響きを持った楽器です。機会がありましたら、是非その美しい響きを体感してみて下さい。

金髪先生

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スチールギターについて

スチールギターについて

スチールギターについて
スチールギターと呼ばれる楽器があります。どんな楽器なのでしょうか?スチールギターの弾き方や、スチールギターのコード、スチールギターの特徴について順次解説していきたいと思います。

スチールギターとは
スチールギターは、ギターを横に寝かせたような格好をしています。ギターを横に寝かせて弾いた所から、このような形をしています。弦の数は、通常のギターと同じ6本弦を初め、8弦、10弦があります。特殊なものとして、7弦や9弦、11弦、12弦もあります。通常のギターと同様にエレキ仕様とアコースティック仕様があります。エレキはアンプを使って音を鳴らし、エフェクターを使うこともできます。

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▲スタンドで立っているスチール・ギター

 

▲こちらは10弦です。

 

スチールギターの弾き方
スチールギターは、押弦をしません。左手に持ったバーで弦長をコントロールします。ボトル・ネック奏法と同じ要領です。使うバーは、ボトルネックのような軽いものではなく、鉄の塊を棒状にした重いバーを使います。バーが重いとサスティンのあるハリのある良い音がします。バーが軽いと音の伸びは少なく、低音感のないペラペラの音になりますが、細かいフレーズ回しができるようになります。

▲色々なバーがあります。

右手はサム・ピックとフィンガー・ピックつけて弾きます。左手にバーを持つ事を前提としているため、弦のテンション(張力)が通常のギターに比べて強くなっています。押弦の必要がないことと、テンションが強い方が音の伸びが良い為、太い弦を張って、張力を稼いでいます。弦の張りがキツイ為、指ではじくと弦の強さに負けて、綺麗な音を鳴らす事ができません。通常のフラット・ピックでは、手首の角度がおかしくなり、弾きにくくなります。そのため、スチールギターはサム・ピックとフィンガー・ピックで弾きます。

スチールギターは大きく分けてラップ・スチールとペダル・スチールに分けられます。ペダル・スチールは、ギターにペダルやニー・レバーが付いていますが、ここで紹介するのは、ラップ・スチールです。ラップ・スチールは、名前の通り、ひざに置いて弾きます。先に紹介したように、スタンドに立てて、立って弾く事もできます。

▲スチール・ギターを弾く

スチールギターの特徴
ico_num5a_1スチールギターは常にバーを使って弾きます。スライド・プレイの経験者は解ると思いますが、押弦に比べ、自由なコード・フォームを作る事ができません。コードは基本的なトライアドを中心に弾き、4和音以上のコードは構成音を考えながら、2和音、3和音を組み合わせて弾く事になります。

ico_num5a_2右手はサム・ピックとフィンガー・ピックなので、ストロークで弾くのではなく、各弦を爪弾きます。ストロークは殆どしません。ストロークしない限りは、同時発音数は最大で3音です。殆どのフレーズが、単音か2音、3音の組み合わせになります。

ico_num5a_3バーを使うプレイ・スタイルのため、チューニングがオープンになります。チューニングのパターンは色々ありますので、全てを網羅する事はできません。ジャンルや弾きたいフレーズに合わせて2つ、3つのチューニングを覚えて弾きこなします。

ico_num5a_4主に使われるジャンルはハワイアンかカントリーです。それらの雰囲気を出したい時に使われる事もあります。カントリーで使われるのは、ペダルの付いたペダル・スチールが多いです。が、CINDY CASHDOLLARのようにペダルのないスチール・ギターでもカントリーの名手が沢山います。通常のギターと違って、どんなジャンルでもオールマイティーに使われている訳ではないようです。

チューニングについて
スチールギターは左手にバーを持って弾く為、オープン・チューニングで弾く事が基本となります。様々なプレイヤーが独自のチューニングで弾いていますが、ここでは一般的に使われるC6チューニングの一例を紹介しておきましょう。各弦のチューニングは以下の通りです。

10弦 8弦 6弦 音程 音名
1弦 1弦   G
2弦 2弦 1弦 E
3弦 3弦 2弦 C
4弦 4弦 3弦 A
5弦 5弦 4弦 G
6弦 6弦 5弦 E
7弦 7弦 6弦 C
8弦 8弦   A
9弦     F ファ
10弦     C

6弦スチール・ギターのチューニング表を見てみましょう。1~3弦は開放弦でAm、4~6弦はCになります。開放をじょろ~んと弾くとC6又はAm7になります。スチールギターには、通常のギターと同じようなルート音の概念がありません。コードは構成音のみで考えます。従ってC6=Am7になります。これは、ウクレレの開放弦と同じ構成音になります。8弦や10弦のチューニングは、これと違うものも多く使われます。あくまで、一例と思っておいて下さい。特に8弦のチューニングは1弦~ECAGECAGとするものがよく使われます。1~4弦のオクターブ下を5~8弦に張ったものです。

Tunning

※スチール・ギターのチューニングは、全弦を440Hzで合わせてはいません。スチール・ギターは、弦によって基準となる音程を変えています。このチューニング観が、また独特なニュアンスを生みます。

スチールギターの弦
スチール・ギターは、名前の通りスチール弦を張っています。チューニングに合わせて弦のゲージは大体以下のようになっています。メーカーやプレイヤーの好みで違いはあります。バーを使って弾くので、フラット・ワインドの弦を使う事も多いです。弦は、6弦用、8弦用、10弦用のセットで販売されています。10弦のセットで1,200円〜3,000円位です。

音程 ゲージ
SteelStrings
▲8弦のセット弦です
1 G 012
2 E 014
3 C 018
4 A 022
5 G 024
6 E 030
7 C 036
8 A 042
9 F 054
10 C 068

足回り
スチールギターの多くは、エレキ・ギター同様にアンプに繋いで音を鳴らします。アコースティックのスチールギターもあります。アンプは、通常のエレキ・ギターで使われるアンプを使えばいいです。スチールギター専用のアンプもありますが、高価な事と、国内にあまり流通していないので、入手は困難でしょう。その際、クリーン・トーンに特化したフェンダー系のアンプや、RolandのJC-120等を使うと良いでしょう。アンプを繋ぐという事は、エフェクターを繋ぐこともできます。特に、手元でのボリューム・コントロールが難しいため、ボリューム・ペダルは多く使われます。音の特徴を活かして、リバーブやディレイの空間系も用意するといいでしょう。また、コンプ系のエフェクターも良く使われます。サスティンを活かす事がプレイの特徴なので、あると便利です。

Efx

次回に持ち越し
スチールギターは独特なサウンドを持つ楽器ですが、ボトル・ネックのギターとの違いは?卓越した演奏技術があれば、それに勝るサウンドは通常のギターで鳴らすことは出来ませんが、けっこうな所まではボトルでも似たようなサウンドを出す事ができます。では、スチールギターの優れている点は何なんでしょう?ゆっくり検証していきましょう。

金髪先生

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スチールギター教本 まもなく発売

ラップスチールギター伴奏の教科書

ラップ・スチール・ギターの教則本「ラップスチールギター伴奏の教科書」がまもなく発売されます。本書は、6弦C6チューニングのスチール・ギターを使って伴奏を弾くための教則本になります。バンド内での伴奏演奏をする為の方法、伴奏を弾くためのテクニック、コードとメロディーに対するアプローチの仕方など、伴奏演奏をする全ての技術と知識を解説しています。第5章伴奏の実装フレーズでは、実際の曲に伴奏を入れるパターンを掲載しています。実際の曲の中でどうフレーズとして活かしていくのかの分析をしていますので、譜面を弾くだけではなく、しっかりと分析をしてフレーズの概要を捉えるようにしていきます。

掲載されているエクササイズのお手本音源は、全て無料でダウンロードすることができます。譜面と合わせて演奏を良く聴きながら練習することで、伴奏を弾く際のリズムやハーモニーの感覚を身に付ける事ができます。

サンプルページ-1(第1章 基本コードのフォームを確認)

サンプルページ-2(第3章 伴奏テクニックの練習)

サンプルページ-3(第5章 応用曲による伴奏フレーズの実装例)

2020年年末を目途に発売を予定しています。現在先行予約を受け付けております。ご予約頂いた方には発売時に当方よりご連絡いたします。下記フォームより必要事項をご入力いただき送信ください。複数冊ご希望の方はご希望の数をご記入ください。

その他ご不明な点やご質問等がありましたらお気軽にお問い合わせください。

先行予約のお申し込みは終了いたしました。下記ご購入ページをご利用ください。

→スチールギター教則本購入